【読書感想】道路を渡れない老人たち(著者:神戸利文・上村理絵)
道路を渡れない老人たち
『道路を渡れない老人たち』というインパクトがあるタイトルが目を引く。
サブタイトルに『リハビリ難民200万人を見捨てる日本。「寝たきり老人」はこうしてつくられる』という、これまたインパクトがある文が表紙に載っている。
この本の著者は、リハビリ専門デイサービスの経営者と理学療法士である。
入院すると体の機能が低下する高齢者
『高齢者が病気で入院した後、足腰の機能が弱って寝たきりになってしまった』という話は昔からよく聞く。
残念ながら今も多かれ少なかれその傾向は続いているのだと、この本を読んで分かった。
数年前の話になるが、私の父が病気で長期間入院したとき、退院時に、体の機能や体力を回復させるためにリハビリできる病院や施設を探したことがある。
その際、リハビリに特化した病院や施設がほとんどないことを知った。
リハビリに特化した病院や施設が少ない理由として、保険適用でリハビリを受けられる疾患は法律で定められていて、定められた疾患以外の病気でリハビリを受けようとしても保険適応外になることがわかった。
また、体の機能回復のためのリハビリを受けるには、個人で仕事をしている理学療法士に依頼する方法というのがあることもわかった。
けれども、経験とノウハウを持った理学療法士がどこに居るのか、果たしてリハビリにノウハウを持った理学療法士がどれくらい居るのかすら、結局よく分からなかった。
「リハビリに特化した施設を探しておく」重要性
『高齢者が入院後、退院するときになって急にリハビリ施設を探そうとしても、リハビリ専門職がいる施設を見つけるのはなかなか難しい』-このことを私の父のケースで実感した。
時間に余裕があるときに、リハビリ専門職がいる施設に関する情報を見つけておこうと思った。
次回、ケアマネージャーさんとの面談の際に、リハビリ専門職がいる施設について聞いてみようと思っている。
この本の著者が経営する施設は新宿区にあるらしい。
リハビリ専門職の地位が低い日本
著者はこの本で、日本における『リハビリ専門職の地位の低さ』を指摘する。
理学療法士のみならず、作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ専門職は原則として、日本では医師(または看護師)の下で働くようになっている。
逆に言えば、何かあったときに医師(または看護師)が責任を取る形になっている、ということだ。その点ではリハビリ専門職に責任がかからないようになっているといえる。
その一方で、リハビリ専門職が主導してリハビリ業務を行えないこと自体が、リハビリ専門職の技術力向上を妨げているともいえる。
いち利用者としては、医師とリハビリ専門職のナワバリ争いは置いておいて、機能訓練のリハビリをもっと気軽に受けられるようになってもらいたい。
道路を渡れない老人たち
(著)神戸利文・上村理恵
(出版元)アスコム
(出版年)2021年
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