【読書感想】もはや老人はいらない(著者:小嶋勝利)

「もはや老人はいらない」という本を読んだ。

この本を読んでみて、介護業界に人が集まらない理由がよくわかった

親を老人ホームに入れたいとは思わなくなった。

そして、自分が年老いても老人ホームには入居したくないと思った。

これからは、老人はできる限り自宅で暮らしたほうが良いみたいだ。

介護施設という場所を終の棲家と考えて自宅を処分しないほうが得策だ。

我が家にも高齢の母がいるが、本書を読んでみて、母が介護が必要な状態になっても可能な限り在宅で介護していこうと思った。

「もはや老人はいらない」を読んで、なるほどと思った点について以下にまとめる。

 

介護業界の闇

この本を読むと、介護業界で働きたいとは思わなくなる。

そういう意味では、この本は介護業界に転職をしようと思っている人には一読をおすすめしたい

著者は介護施設に勤務し、また介護施設の施設運営の経験がある人である。

この本には著者が介護施設で職員を操るためにどういう小細工をしたのか実例が書かれている。

なぜ介護施設は人手不足なのか・介護施設の職員はどんな人が多いのかがこの本に書かれていて参考になる。

この本で著者は「介護施設というものが雇用施策として存在している」と述べている。

つまり、特段の技能を持たない人たちの雇用の受け皿として介護施設が存在しているのだ。

確かにそうなのだろう。

 

老人ホームの住み替えが当たり前になっていく

この本によれば、介護施設というのは現在は過当競争の真っ只中にあり、今後は数が減っていくと予想されるそうである。

これからは老人ホームが普通に潰れる時代が来る

だからこそ、退職金を全額つぎ込んで老人ホームに入居するなんてことは避けたほうが良いと思った。

それに、介護施設は離職が多いから、見学に行ったときと実際に入所するときとでは居る人が違うことが多いし、介護の質も今は良くても今後どうなるか分からない。

これからは老人ホームの住み替えが当たり前の時代になっていくのだろう。

 

介護の「流派」という問題

介護に関する書籍を読んでいていつも気になるのが、介護には「流儀」というものが存在すると書かれていることだ。

介護施設ごとに決まった流派にしたがって介護がなされていくらしい。

流派といっても、その介護施設の実力者が採用している方法に合わせて介護がなされていく、といったものらしい。

別の流儀の介護施設に転職した場合、そこの流派のやり方に合わせて介護が求められるとのこと。

この本でも書かれているが、医療には「カルテ」があるので、カルテを見れば後を引き継げるが、介護にはそういったものがないので、流派というものがはびこるのかもしれない。

こういった閉鎖的な仕事の進め方も、介護業界で離職者が絶えない理由のひとつだろう。

 

男性は老人ホームに向かない

この本には「男性は老人ホームには向かない」と書かれていた。

なるほど、確かにそうだと思う。

男性は老人ホームに入らないほうがよいのだろう。

癖のある入居者は無視され放置されて弱って亡くなる場合だって実際あるだろう。

実際、知り合いの高齢男性が老人ホームに入居して1か月ほどで亡くなったと聞いたことがある。

亡くなった高齢男性は癖がある人だったから、老人ホームで煙たがれて放置されたのかもしれない。

 

個人的な感想

以上に挙げたことのほかにも、生活保護者に対する介護施設の考え方・ケアマネージャーの地位と現状・M&Aが進む介護業界など、介護業界の実情が書かれている点でこの本はとても参考になった。

この本の著者のように異分野(不動産業)から介護に参入してきた人と、福祉の分野ひとすじで仕事をしてきた人とでは視点が本質的に異なると思った。

福祉分野一筋のひとは、まず福祉の精神ありきだ。

一方、現在の介護施設の多くを占める民間運営の介護施設は福祉というよりもビジネスなので、コスト意識が重要になってくる。

この本を読んで改めて、福祉とビジネスのせめぎ合いになっている介護業界の現状がなんとなくわかった。

 

もはや老人はいらない

著者: 小嶋勝利
初版: 2020年7月
発行元:ビジネス社

 

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