【読書感想】特集 追悼・筒美京平(MUSIC MAGAZINE 2020年12月号)

MUSIC MAGAZINE 2020年12月号は、昨年(2020年)10月にお亡くなりになった筒美京平特集である。

筒美京平氏と交流があったミュージシャンの近田春夫氏へのインタビューや、1998年に同誌に掲載された筒美京平氏へのインタビューなどが本誌に掲載されている。

私は、筒美京平氏が作曲した曲を子どもの頃に聴いて育った世代なので、本誌を読みながら「こんな曲もあったな」と昔の曲を思い出して楽しむことができた。

筒美京平氏といえば、生前マスコミにほとんど登場しないことで長年知られていた。

今まで見かけたことがあるインタビュー記事で筒美京平氏はいつもスーツをきちっときた姿で写っているのが印象的だった。

 

年代別のヒット曲の解説が掲載

本誌には筒美京平氏が作曲したヒット曲の解説が年代的に並べられている。

個人的には80年代のアイドル全盛時代のヒット曲が興味深い。

筒美京平氏はトシちゃん(田原俊彦)とマッチ(近藤真彦)の双方に楽曲を提供したが、同誌で近田春夫氏がコメントしているように、トシちゃんに提供した楽曲のほうが難しい曲が多いようだ。

トシちゃんの曲は、トシちゃんが踊れるようなリズムの曲であることが必須だったせいもあるだろう。

それだけでなく、近田春夫氏のコメントにあるように、筒美京平氏はトシちゃんの個性的な声に興味があったのかもしれない。

本誌によると、筒美京平氏はトシちゃんの「原宿キッス」が気に入っていたそうだ(私も大好きな曲だ)。

「原宿キッス」の派手なベースは後藤次利氏演奏だろうか?(後藤次利氏は筒美京平氏と親交があったそうだ)。

 

声の魅力を引き出す天才

本誌で一番興味深かったのは、筒美京平氏は歌手の声の魅力を引き出す能力があったということだ。

たとえば、筒美京平氏は岩崎宏美に「これから高音を褒められることが多いだろうが、中低音が魅力であることを忘れないように」と伝えたそうである。

ほかにも、小沢健二に提供した楽曲「強い気持ち・強い愛」はほかの小沢健二の楽曲と比べて音域が高いそうで、筒美京平氏にとっての小沢健二の声の魅力は小沢健二本人が思うよりも高い音域にあったという興味深い話が紹介されている。

筒美京平氏はアイドル歌手から歌唱力のある歌手まで幅広い層の歌手に楽曲を提供しているが、たとえば郷ひろみ・沖田裕之・平山三紀・松本伊代などちょっと変わった声(鼻にかかった甘い声)の持ち主がお好きだったという話が面白い。

90年代以降、筒美京平氏のような職業作曲家が減ってしまった。

筒美京平氏は海外のヒット曲を上手く取り入れて作曲をしていたそうだが、残念ながら90年代以降、本家本元の海外のヒット曲に魅力がなくなってしまった(いろいろな理由で)ようにも思える。

筒美京平氏は幼少期から青山学院で、近田春夫氏は慶應幼稚舎出身、都倉俊一氏は学習院出身。

ほかにも青山学院出身はかまやつひろし・後藤次利、慶應出身は松本隆・松任谷正隆・平尾昌晃などたくさんいる(高等部までの人を含む)。

70年代80年代の音楽シーンはこういった東京のゆとりがある環境で育った人たちが作り上げていた部分が大きいのだ。

 

特集 追悼・筒美京平(MUSIC MAGAZINE 2020年12月号)

書名: MUSIC MAGAZINE 2020年12月号
発行元:株式会社ミュージック・マガジン

 

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