筒美京平氏の曲にみる「日本語歌詞の母音のアクセント」
「筒美京平 ヒットメーカーの秘密」という本には、Jポップの現状や日本語歌詞の歌に関する近田春夫氏(著者)の話が載っている。これが面白かった。
「読書感想「筒美京平 大ヒットメーカーの秘密」近田春夫(2021年/文藝春秋)」
近田春夫氏によれば、歌を作るプロセスが昔と今とでは根本的に変わってしまったそうだ。
昔はいわゆる職業作家が曲を作っていた。それが今はコンペ形式で曲を集め、その中から良い曲を選ぶそうだ。このため、副業感覚で曲を作って応募する人も多いらしい。
曲作りの低コスト化を図るためだとは思うが、こういう状況では名曲は生まれないのは分かる気がする。
日本語の歌:母音にアクセントがある
この本「筒美京平 ヒットメーカーの秘密」で近田春夫氏は「日本語の歌の特徴」について述べる。
なるほどな、と思った。
近田春夫氏によると「日本語の歌の心地良さは、母音にアクセントがあること」なのだそうだ。
そもそも日本語というものが、ひらがな一音一音から成立していることに起因しているからだろう。
筒美京平の歌のサビには母音にアクセントがある。それは、日本語の歌詞をメロディーに載せたときに母音のところが心地良い響きになるように筒美京平氏が心を配っていたからだと思う。
つまり、日本語の歌が心地よく響くポイントを筒美京平氏は実に的確におさえていた。ということだ。
実際、筒美京平氏が作曲した曲を歌ってみると、母音の部分にアクセントがついている箇所を歌うと、とても心地良い。
筒美京平「母音にアクセントがある歌」の具体例
筒美京平氏は、平山三紀・郷ひろみ・松本伊代に代表される「鼻にかかったような甘い声」がお気に入りだったそうだ。
「母音にアクセントがある箇所」の具体例として、このお三方の代表曲の歌詞のサビの部分を抜粋する。
実際の歌を聴いてひらがなに書き起こしてみた。
アクセントがある母音(赤字)の箇所は聴いていて実に心地良い。
どれも名曲だ。ぜひ聴いてみてほしい。
それにしても郷ひろみの声が若い。郷ひろみのこのルックスにこの声が備わっているのは奇跡だ。
よろしく哀愁(郷ひろみ:作詞安井かずみ・作曲筒美京平)
会えない時間が
愛 育てるのさ
目をつぶれば 君がいる
あ~えな~あ~い じかんがあ~
あ~い~そおだあてるのさ~
めえをつ~うぶ~うれば き~いみ~いがいる
真夏の出来事(平山三紀:作詞橋本淳・作曲筒美京平)
悲しい出来事が 起らないように
祈りの気持ちをこめて 見つめあう二人を
かなあ~しい~い できごと~おが~ おこらなあ~い~よお~に~
いのおりい~のお~ きもおちい~を~ こめえて~ みつめあ~う ふたりを
センチメンタルジャーニー(松本伊代:作詞湯川れい子・作曲筒美京平)
何かに さそわれて
あなたに さらわれて
な~あにい~かにい~ さそわあ~れてえ~
あなあ~たにい~ さらわあ~れてえ~
筒美京平について(まとめ)
【読書感想】特集 追悼・筒美京平(MUSIC MAGAZINE 2020年12月号)