名曲「飾りじゃないのよ涙は」素晴らしい仮歌を唄った井上陽水

昭和の歌謡曲が人気らしい。

先日(2022/4/30)、NHK BSプレミアムで1989年の中森明菜のコンサートが放映されていた。

中森明菜の名曲『飾りじゃないのよ涙は』の作詞・作曲が井上陽水であることは、
良く知られている。

以前このブログで紹介した村上ポンタ秀一の自伝『自暴自伝』には、
『飾りじゃないのよ涙は』の仮歌を唄う井上陽水の話が載っている。

【読書感想】自暴自伝

村上ポンタ秀一の『自暴自伝』はとにかくおすすめの本だ。

70年代の歌謡曲に興味がある人には、『自暴自伝』にある、70年代初頭の歌謡曲全盛時代に村上ポンタ秀一がスタジオ・ミュージシャンをやっていた頃の話が面白いと思う。

 

久し振りに中森明菜『飾りじゃないのよ涙は』を聴いて思ったこと

久し振りに中森明菜の『飾りじゃないのよ涙は』を聴き直してみた。

まず感じたのは、中森明菜の声が若い、ということ。

思ったよりも軽いアレンジに仕上がっている。

とにかくエレキギターがノリノリである。

ドラムには電子ドラムが使用されている。

軽いアレンジだと感じたのは電子ドラムのせいかもしれない。
電子ドラムはこの曲が発表された1984年頃の曲によく使用されていた。

ユーミン・中島みゆき・竹内まりや・尾崎亜美・井上陽水・玉置浩二・財津和夫・坂本龍一・細野晴臣・大瀧詠一・山下達郎・佐野元春…80年代は大物ミュージシャンがアイドルに楽曲をこぞって提供する時代だった。

 

仮歌を唄う井上陽水

村上ポンタ秀一の著書『自暴自伝』によれば、
アイドル歌手等が歌謡曲をレコーディングする場合、
「仮歌」といって、
歌い方のガイドラインとなる歌を別の歌手に歌わせる方法が採られるそうだ。

ある時期までの歌謡曲というのは、
その曲の作者がスタジオまで出向いて仮歌を歌って、
歌い方のガイドラインを聴かせたものらしい。

たとえば、
河合奈保子の『ケンカをやめて』は竹内まりやが、
中森明菜の『飾りじゃないのよ涙は』は井上陽水が、
それぞれ仮歌を歌ったそうだ。
なんと豪華な仮歌だろうか。

今では音大出身の「仮歌シンガー」が仮歌を歌うのが一般的らしい。

村上ポンタ秀一いわく、

・音大出身の仮歌シンガーは音程はしっかりしているけれども、面白みに欠ける
・アイドルが歌うよりも、作者が歌ったほうが断然いい場合が多かった

とのこと。

井上陽水が歌う『飾りじゃないのよ涙は』があまりにも素晴らしくて、
陽水のシングルだと思い込んでいたと、
村上ポンタ秀一は『自暴自伝』で語っている。

言うまでもないが、『飾りじゃないのよ涙は』のドラムは村上ポンタ秀一が叩いている、
ということだ。

なお、井上陽水版の『飾りじゃないのよ涙は』は、後にCDで発表されている。

 

中森明菜の記事から

先日、80年代の中森明菜を振り返る記事で、
井上陽水が『飾りじゃないのよ涙は』の仮歌を唄ったエピソードを偶然発見した。

上の記事によれば、
『飾りじゃないのよ涙は』の仮歌は、
当初は井上陽水ではなく、女性シンガーが歌ったものだったそうだ。

女性シンガーによる仮歌を聴いた井上陽水(作詞・作曲者)が、
「イメージが違う。僕が唄っていい?」と仮歌を唄うことを引き受け、
その場にいたスタジオ・ミュージシャン(村上ポンタ秀一はその中にいた)が大ノリで、
スタッフの鳥肌が立つほど素晴らしい仮歌を井上陽水が唄いあげたとのこと。

この点、『自暴自伝』に述べられている村上ポンタ秀一のエピソードと一致する。

最終的には、井上陽水の仮歌に中森明菜がインスパイヤされて、
名曲『飾りじゃないのよ涙は』が完成した、というわけだ。

名曲『飾りじゃないのよ涙は』は、
歌手である中森明菜だけでなく、作詞作曲者である井上陽水、
そして村上ポンタ秀一をはじめとする腕利きのミュージシャン達によって生み出されたのだ。

*登場人物は敬称略