【読書感想】自治体職員が書いた子ども・子育て支援新制度の基礎がわかる本

今回は、子ども・子育て支援新制度に関する本を紹介する。

 

本のタイトル

書籍名: 自治体職員が書いた子ども・子育て支援新制度の基礎がわかる本
著者:  水畑 明彦
出版社: デザインエッグ株式会社
出版年: 2018年

この本は、神戸市の職員である水畑明彦氏が書いた本である。

水畑氏が神戸市の職員として、窓口で保護者から話を聞いたり、自治体職員として保育施策を作成したりする業務経験を踏まえて、子ども・子育て支援新制度の仕組みについて書かれたのがこの本である。

保護者向けというよりも、自治体の職員向けの本だと思う。

 

複雑な子ども・子育て支援新制度の仕組みについて書かれた本

2015年度に「子ども・子育て支援新制度」が始まった。

けれども、幼稚園・認可保育所・認定こども園・地域型保育事業所・認可外保育施設と、最近は子ども関連施設の種類が多くて、違いがよく分からない人も多いと思う。

この本では、教育・保育施設の一覧とともに、保育園と幼稚園の制度上の違い・認定こども園が誕生するまでの経緯・幼保一元化について図を交えて書かれている点が分かりやすい。

 

新制度下での自治体の業務フローの説明

本書には、保護者が行う手続きだけでなく、もっと広い視点から、自治体でどのような保育施設が必要かについての事業計画を立てるところから説明が始まり、施設の整備、施設の認可、保護者への支給認定・利用調整・契約までの流れが説明されている。

この辺の話は、保育課に新しく着任した自治体職員が読むと良い話だろう。

 

認定こども園・幼保一元化について

「認定こども園を増やす」ことは国の方向性であるものの、現場ではそう簡単ではないことを著者はよく理解していることが本書から伝わってくる。

そのうえで、認定こども園が幼稚園の教育と保育園の保育の双方にプラスになるよう、幼稚園や保育園に自治体職員として働きかけていくという著者の姿勢には好感がもてた。

 

福祉畑出身の著者による子どもへの優しい視点

著者は一貫して福祉畑を歩んできた方である。

福祉畑を歩んできた著者だからこそ、待機児童についても「子どもの最善の利益」を守る(子どもの権利条約)ことを大前提にしている点が好印象だった。

 

待機児童と子どもの最善の利益

本書で印象に残った話をひとつ挙げる。

認可保育所に入れなかった子どもの受け皿として地域型保育事業所(たとえば小規模認可)を利用する家庭もある。

しかし、3歳からお目当ての認可保育所に入所できるよう、いわゆる「認可保育所の入所者選考のためのポイント稼ぎ」のために、保育の質が良くない地域型保育事業所に子どもを通わせるのはどうなんだろう?という話が本書にある。

著者は自治体職員なので、この本ではかなりオブラートに包んだマイルドな表現で書かれているけれども、要は、お目当ての認可保育所に入所するために、「今」を犠牲にして保育の質が良くないとわかっている小規模認可に子どもを通わせることは本当に良いことなのか、著者は問いている。

保活する際、こういった視点、つまり「その選択は子どもにとってどうなのか」という視点が大切だと思った。

 

幼保一元化に対する私学側の考え

そしてもうひとつ印象に残った話がある。

著者が自治体職員であり、公平性を保たなければいけないという立場上、本書はオブラートに包んだマイルドな表現で書かれているので一見分かりにくいのだが…私立幼稚園の関係者の中には「認定こども園」という制度を歓迎していない人が結構いる節が本書から伺える。

幼稚園を認定こども園に転換した場合や、幼稚園が「子ども・子育て新制度」を適用する園になった場合、「応諾義務」といって、入園を希望する子どもを原則として園側は受け入れなければならないそうだ。

しかし、「訳ありの家庭を受け入れたくない」という気持ちがある私立幼稚園関係者も少なくないことが本書から伺える。ここら辺が、幼稚園のままの存続を望む私立幼稚園関係者の本音なのだろう。

 

神戸市の教育・保育はどんな感じか

この本の著者が勤務している神戸市での教育・保育はどんな感じなのか、ウェブ上で調べてみた。

・幼稚園:神戸市は2020年10月現在、公立幼稚園が33園ある。その一方で、神戸市では公立幼稚園の一部を順次閉園しているが、閉園にあたっては詳細な検討のもとに閉園計画を立てている

・認定こども園:神戸市の認定こども園の数は中野区に比べて非常に多い。傾向として、関東地区よりも関西地区のほうが幼稚園から認定こども園への移行がすすんでいるようだ。

・認可保育所:公立園が過半数で、私立園は社会福祉法人による運営が多く、いわゆる株式会社立のところは少ない(まったくないわけではない)。

ウェブ上で見る限りは、神戸市の教育・保育環境は中野区に比べるとかなり恵まれていると思う。制度設計をする人が著者のような福祉畑の人だと温かみのある保育教育施策になるのだろうか。

 

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