【読書感想】得手に帆あげて(本田宗一郎)
気分が落ち込んだときに読みたくなる本、それがホンダの創業者、本田宗一郎の著書「得手に帆あげて」だ。
この本からは一貫して若者へのエールが伝わってくる。
私自身は若者ではないけれど、この本を読むと元気が出てくるのだ。
本のタイトル「得手に帆あげて」
著者: 本田宗一郎
出版社: 光文社
出版年: 2014年
古さをまったく感じさせない
この本のすごいところは、古さをまったく感じさせないところだ。
この本がいつ頃書かれたのか特定することはできないが、本田宗一郎氏は1991年に亡くなったことから、この本が30年以上前に書かれたことは確かだ。
さらに、この本の中に「戦後15年経った」と書かれた箇所があり、その箇所については昭和35年頃つまり今から65年も前に書かれたということだ。
それなのに、この本は今書かれたものだと言ってもまったく違和感がない。
この本には総じて若者を励ます内容が書かれている。
若い人へのエール:得手に帆あげて
「個性を大切にしろ」・「好きなことをとことんやるべき」という言葉に励まされる。まさに、この本のタイトルである「得手に帆あげて」がこの本の一貫したテーマである。
若い人の自殺について
「人生、学校がすべてではない」、「一年二年の遅れは大したことない」、「受験に失敗したなんて、コースの選び方が間違っていただけ。個性を生かした生き方は必ずあるはずだ」と本田宗一郎氏は言う。
若い人の自殺について本田宗一郎氏は容赦なく批判しているが、その厳しい言葉には若い人へのエールがある。
マーケットは作れ
「お客のニーズに合わせるのではなくマーケットを作れ」とある。少なくとも30年以上前にそう言っていたのには恐れ入る。
トイレの話
本田宗一郎氏は「トイレ」に並々ならぬ興味を持っていたらしい。
よそのお宅・取引先・外国に旅行に行った先などで、まずトイレを確認していたらしい。
トイレに人となりが出るそうだ。
そういえば昔、私が就職活動をしていた頃「その会社がどんな会社かを知るには、会社のトイレを確認するとよい」と聞いたころがあるが、この話は本田宗一郎氏が出典だったのかもしれない。
漢字嫌い
この本を読むと、本田宗一郎氏は漢字嫌いだったことがわかる。
ちょっと親近感を覚える話である。
この本で本田宗一郎氏は漢字を覚えることの非効率性を述べている。
中国が漢字を簡略化したこと(簡体字のことだと思う)は素晴らしい・漢字を覚える手間を省いたほうが効率がよい・漢字を廃止してカタカナに統一すべきだと本田宗一郎氏は述べる。
私自身は、漢字は中国文化の影響を多大に受けた日本の伝統文化だと思うから、本田宗一郎氏の意見には全面的に賛成できない。
けれども、日本人の中には漢字が苦手な人が少なくない。漢字を覚えるために要する膨大な時間を考えると、効率性を考えていっそ漢字を廃止すべきだという大胆な考え方も確かに一理ある。
漢字を廃止すれば、外国人(漢字を使う中国人は除く)にとって日本は相当住みやすい社会になるのは確かだろう。