【読書感想】地下鉄に乗って(著者:浅田次郎)【鍋屋横丁】
浅田次郎氏の小説『地下鉄に乗って』を読んだ。
表紙には昔の地下鉄丸ノ内線が描かれている
『地下鉄(メトロ)に乗って』は浅田次郎氏が幼少時に住んでいた中野区・鍋屋横丁が舞台の小説である。
1951年中野区生まれの浅田次郎氏は、地下鉄丸ノ内線新中野駅の鍋屋横丁交差点を少し南にいった上町(かみちょう)に住んでいたそうだ。
『地下鉄に乗って』の舞台は、地下鉄丸ノ内線新中野駅。
地下鉄丸ノ内線・新中野駅
『地下鉄に乗って』には鍋屋横丁にゆかりがある場所が登場する。
中野オデヲン座、杉山公園、青梅街道、アーケード、交差点近くの本屋、角の文房具屋、駅近くのパチンコ屋…など。
親しみがある場所のことが書かれているので、読むと場面が想像できてしまう。
『地下鉄に乗って』の初版は1994年。
1994年といえば、電子メールや携帯電話の普及率がまだ高くない時代である。
ゆえに『地下鉄に乗って』にはスマホも携帯電話も電子メールも登場しない。
『地下鉄に乗って』の登場人物たちは固定電話で連絡を取り合う。
そのせいか、物語の展開が今よりもゆっくりと進行するように感じられる。
物語は途中、SFのようにタイムスリップする。それでも、小説全体になんだかゆったりとした感じが漂っているのだ。
表紙に描かれた丸ノ内線新中野駅のホームとおぼしき絵には、今のようなホームドアがまだ設置されていない。
物語は最後、思いもよらない方向に展開する。
それでも悲壮感があまりないのは、主人公の愛する人の存在すら消えてしまうせいだろうか。
地下鉄丸ノ内線・新中野駅の入り口は今も、昔ながらの面影を残している。
地下鉄丸ノ内線は線路が地上から浅い場所にあって、地下鉄が架線を通る際に摩擦で生じる独特の臭いがするのが好きだ。