静かに老いるということ
数日前の読売新聞に、高齢者からのある投書が掲載されていた。
その投書に書かれていたのは、最近の健康ブームに対する苦言だった。
その高齢者からの投書の内容を要約すると「最近はなにかと運動・運動と運動を強要されるのがつらい。高齢者は運動して健康にならないといけないのか。静かに老いたい。」という内容だった。
確かに、今は健康維持のための運動を高齢者に強要しすぎる風潮があることは否めない。
実際に私の母も運動を積極的にやってはいるけれども、高齢になると体調が芳しくないときに無理に動くのが若い時よりもつらくなるようだ。
ここ最近の運動ブーム
思えば、健康維持に運動が大切だと盛んにいわれるようになったのはここ20年くらいだろうか。
特に高齢者に対しては、昔は運動を強いることはなかった。
私の祖母が存命だったいまから20年以上前は、高齢者に運動をすすめるような風潮はなかった。
ただそのせいで当時は寝たきり老人は多く、寝たきり老人を世話する家族の介護負担が重いことが問題になっていた。
高齢者と運動
私の祖母も寝たきり老人のひとりだった。
祖母は10年近く寝たきりの状態だった。
家族みんなで祖母の介護をしていた。
私は当時、今でいう「ヤングケアラー」だった。
けれども、家族みんなで介護をしていたので負担はそれほど大きくなく、たとえば介護のせいで仕事をやめる必要はなかった。
祖母は寝たきりだったけれど頭ははっきりしていた(ボケていなかった)ので、介護はそれほど大変ではなかったせいもある。
ただ、祖母が寝たきりになる前に今の時代のように運動なりリハビリなりをしていれば、祖母はあんなに長く寝たきりの状態にならなかっただろうと、今になって母と話している。
運動を強いられて苦痛を感じる高齢者の気持ちも良く分かる。
けれども、寝たきりだった昔の祖母の様子を見ているだけに複雑な気持ちだ。
高齢者が運動も何もせず、体が悪くなれば長く寝たきりになり、誰かに介護の負担が重くのしかかるのもやるせない気がする。
私自身は運動するとすっきりした気分になるけれど、運動を強いられて苦痛を感じる高齢者はそうではないのだろうか。