【読書感想】河童が覗いたインド(著者:妹尾河童)
今年(2020年)の夏はカレーばかり食べていた。
カレーといえばインド。
インドといえば、妹尾河童著『河童が覗いたインド』だ。
インドといえば『河童が覗いたインド』
写真の本は中野区立図書館から借りてきた『河童が覗いたインド』だ。
本書は文庫本としても出版されている。
ただ、文庫本サイズよりもA5判の本のほうが大きい分、本書の魅力が伝わるかもしれない。
妹尾河童といえば『少年H』を思い浮かべる人も多いだろうが、私にとって妹尾河童といえばこの本だ。
イラストも文もすべて手書き
↑の写真にわかるように、この本、イラストも文章もすべて手書きである。
もう30年以上前から思い出してはこの本を読んでいる。
この本『河童が覗いたインド』の文庫本が実家にもあるはずだ。
パソコン1台あれば誰でもホームページを作れてしまう時代だからこそ、イラストも文章もすべて手書きで描かれたこの本が新鮮に映る。
妹尾河童氏による特徴的なイラスト
しかも、この本に描かれているイラストは、妹尾氏が建造物やホテルの部屋を上からの角度で描いたものだ。
調べたところ、斜め上からの図を俯瞰図、上からの図を上面図と呼ぶらしい。
旅の先々で妹尾氏が地元の人に「スケッチを売ってくれ」といわれるほど緻密なイラストが目を引く。
妹尾氏は、建造物やホテルの部屋を不動産の間取り図のように描く能力をお持ちである。さすが舞台美術家である。こういう能力を持っているからこそ、舞台芸術家になれるのだろうか。
妹尾氏、今年(2020年)で90歳でご健在とのことである。
インドを知りたい人に
インドに旅行した人は「もう一度行きたい人」と「もう二度と行きたくない人」にはっきりと分かれる国だ。
妹尾氏はもちろん前者である。
妹尾氏はこの本の中で、インドに行って一番印象に残ったことは『インドではお互い違うのが当然だと思っていること』だと述べる。
インドは民族・言語・宗教があまりにも多様なので、違うからといって排除していたら何事も回らない。
今後日本で外国人が増えていくのならば、インドのような価値観が必要になるのだろう。
私が印象に残ったのは、妹尾氏が南インドを旅行した際、農業の機械化についてインドの人に見解を求めたところ、インドの人は「機械化すると仕事がなくなって困る人がでるならば、なぜあえて機械化する必要があるのか」と答えたという場面だ。
この件について妹尾氏は「インドの人は時として真理をつくような哲学的な回答をする」と述べている。市井の人たちが哲学的な思考をする点にインドの奥深さを感じる。
この本の初版は1985年。35年も前に現在のグローバリゼーションを予兆するかのような話が出てくるのが興味深い。
今はコロナ禍にあるインド。
今はインドへの旅行は無理だけれど、ゆくゆくはインドに旅行してみたい人・インドを知りたい人におすすめの本である。
河童が覗いたインド
著者:妹尾河童
出版:株式会社新潮社
初版:1985年