【絵本】かわいそうなぞう(ぶん・つちや ゆきお え・たけべ もといちろう)
絵本「かわいそうなぞう」は第2次世界大戦の最中、上野動物園で飼われていたぞうの話だ。
実際にあった話を絵本にしたものである。
絵本「かわいそうなぞう」の初版は1970年。
50年以上も読み継がれている本である。
絵本「かわいそうなぞう」の裏表紙(ジョン・トンキー・ワンリー)
絵本「かわいそうなぞう」には、タイトルのとおり、戦争中に脱走して人を傷つけるからという理由で殺された3匹のぞう(ジョン・トンキー・ワンリー)の悲しいお話が描かれている。
軍からの命令で殺されることになったぞうが、食べ物や水を与えられることなく死んでいく様子が、絵本「かわいそうなぞう」には切々と描かれている。
芸をすれば人間が食べ物や水をくれるんじゃないかと、人間の前で食べ物や水ほしさに必死に芸をする場面がせつない。
今でも上野動物園には、死んだ動物たちの慰霊碑がある。
3匹のぞうもそこで祀られている。
挿絵は、劇画調の水彩画で、昔懐かしい雰囲気がする。
中学英語教科書に掲載
ところで、絵本「かわいそうなぞう」の英語版が中学校の英語の教科書に掲載されている。
教科書に掲載された話(英語版)では、ぞうが殺されていく様子が淡々と語られているだけである。
一方で、本家本元のこの絵本「かわいそうなぞう」では、ぞうが死んだことに対する人間の深い悲しみや戦争への憎しみがはっきりと描かれている。
絵本「かわいそうなぞう」を読んでみて、中学英語教科書に掲載された英語版では「反戦」の要素が抜かれている、ということがわかった。
教科書に掲載された英語版では、絵本「かわいそうなぞう」で作者が訴えたかった趣旨がほぼ抜かれてしまった、ように思える。
人々がぞうの死を悲しむ様子が描かれている
かわいそうなぞう
初版:1970年8月
金の星社
ぶん・つちや ゆきお
え・たけべ もといちろう