【絵本】いやいやえん
今日取り上げるのは、絵本「いやいやえん」だ。
誰でも1度は見たことがある、赤い表紙が印象的な本だ。
この本の初版は1962年。
実に60年近くにわたり読まれてきた本だ。
表紙には主人公の「しげる」と「やまのこぐちゃん」が描かれている。
この本のタイトルの英訳は“NO-NO NERSERY SCHOOL”だそうだ。
なんだか可愛らしい。
この本は表紙の絵を見ての通り、「ぐりとぐら」でおなじみの中川李枝子氏(作者)・大村百合子氏(絵・中川季枝子氏の実妹)のコンビによる作である。
あらすじ
「いやいやえん」の主人公はちゅうりっぷほいくえんに通う「しげる」4歳。
しげるは腕白坊主。
しげるはちゅうりっぷほいくえんのきまりを破ってばかりで、先生にいつも怒られている。
昔はこういう腕白坊主がたくさんいたよなあ。
「いやいやえん」は7つの短編から構成されている。
短編はそれぞれ独立した話になっている。
個人的な感想
我が家での評価
わたしはこどもの頃、この絵本「いやいやえん」が大好きだった。
上の子も「いやいやえん」が大好きだった。
上の子は特にしげるの悪たれっぷりに共感することが多かったようで、読み聞かせをしていて、しげるが悪さをしたり暴れたりする場面が出てくるといつも喜んでいた。
ところが、下の子は今のところ「いやいやえん」があまり好きではない。
下の子は几帳面なので、しげるの悪たれっぷりには共感できないのだろう。
やまのこぐちゃん
わたしが好きな短編は「やまのこぐちゃん」。
熊の子「やまのこぐ」が保育園に入りたい旨のお手紙を保育園の先生に出して、ちゅうりっぷほいくえんにやってくる話が描かれている。
熊のこどもが保育園に入って歌を歌ったりお弁当を食べたりする様子がなんとも愛らしい。
いやいやえん
短編「いやいやえん」では、言うことを聞かないしげるが「いやいやえん」に入れられたときの話が描かれている。
「いやいやえん」にはルールがない。
こどもたちが好き勝手に自分がやりたいことをやっている。
でもルールがないとどういうことになるかが暗示的に描かれている。
こどもたちがやりたい放題の「いやいやえん」で過ごしてみると、きまりがたくさんあるちゅうりっぷほいくえんのことがむしろ懐かしく思えてきたしげるの心情が描かれている。
わたしが昔この本を読んだとき、「いやいやえん」の園長の顔がとても怖くて嫌だった記憶が残っている。
今見るとさほど怖い顔でもない。
けれども、子どもの頃わたしはこの園長の顔が怖くてたまらなかった。
山のぼり
短編「山のぼり」には鬼が出てくる。
ちゅうりっぷほいくえんのこどもたちが山のぼりに行く話だ。
山が5つあって、リンゴの木がある山・バナナの木がある山・みかんの木がある山・桃の木がある山…と、こどもたちにとって魅力的な山の中に1つだけ真っ黒な山があって、その黒い山には鬼が住んでいるという話だ。
そういえば、子どもの頃は鬼が出てくるのが怖くて、この「山のぼり」のお話が怖くて読めなかった。
今読み直すとそんなに怖い話ではない。
登場する鬼も、今見ると可愛らしい姿をしている。
いやいやえんの思い出
この絵本「いやいやえん」は、主人公のしげるが言うところの「字の本」である。
幼稚園や保育園という場所にはもともと「字の本」が少ない。
「いやいやえん」は、園に置いてある数少ない「字の本」だ。
わたしが通っていた保育園の戸棚には「いやいやえん」がいつも置いてあった。
今思えば、先生が読み聞かせに使う本として「いやいやえん」が置いてあったのだろう。
わたしはいつも「いやいやえん」を手にとって読んでいた。
わたしは保育園という場所があまり好きではなかった。
保育園で時間をもてあますことも多かった。
そして、保育園で時間をもてあましたとき、わたしはいつも「いやいやえん」を読んでいた。
保育園が嫌いなこどもが保育園でいつも「いやいやえん」を読んでいたという、なんとも皮肉な話である。
いやいやえん
福音館書店
中川李枝子 作
大村百合子 絵